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感染症メタゲノム研究分野では次世代シークエンス技術や構造解析技術、バイオインフォマティクスと呼ばれる情報解析技術を駆使して感染症の研究をしています。2010年4月から当時の分子原虫学分野の堀井俊宏教授、細菌感染分野の飯田哲也教授、感染症国際研究センターウイルス研究グループ・現京都府立医科大学の中屋隆明教授との複数の研究室の合同チームとして立ち上がり、2023年1月から私が主任研究者として新しい体制で研究を続けています。

合同チームを結成した際に、環境調査の網羅的な微生物探索に使われていたメタゲノム解析という手法で、どのような病原体であっても、簡便かつ迅速に検出できる理想的な感染症の診断手法を開発したいという思いを持って「感染症メタゲノム研究分野」と名付けました。海洋の微生物を探索するメタゲノム研究が”Marine Metagenomics”と呼ばれていたので、我々は感染症における微生物探索研究を目指して”Infection Metagenomics”という英語名にしました。その略称として「iMet」と呼んでいます。ロゴはiMetという文字の周囲に変わりゆく微生物を示した丸印を配置しています。

このチームが立ち上がって12年間研究して来ましたが、理想的な感染症診断法はまだ出来ていません。残念ながら日本においても未だに原因不明の感染症が疑われて亡くなられる小児例があり、世界にはもっとあります。我々が解析しても原因がわからない症例も多く、無力さを感じます。理想を達成するには、まだまだ時間もかかり、仲間ももっと必要だと考えています。

病気の原因となる微生物を発見して感染症学が始まりました。現在は様々な微生物がヒトと共生していることがわかり、ヒトと微生物との関係の重要性が増しています。感染症を理解するためには、悪さをする感染性微生物と、常に一緒にいる共生微生物、そしてヒトとの3者関係をよく調べないといけません。Infection Metagenomicsという微生物探しを一緒にしてくれる仲間を募集しています。いつの日か、原因不明の感染症というものは、もはやないと言える日が来ることを信じています。

2023年1月

中村昇太

 

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